市に「三部制義務教育学校」構想

いじめ、不登校対策強化目指す

 いじめ、不登校児童生徒の対策として松戸市教育委員会では「三部制義務教育学校」の構想を持ち、実現に向け研究を深めていくという。昨年9月の市議会で公明党の渡辺美喜子議員が大津市のいじめ自殺事件を受け、市のいじめ対策について質問したところ、山根恭平教育長が答弁で、「学校支援チームの設置」、「ネットいじめへの対応」など人員の強化に加え、特に力を入れるものとして「校内適応教室の増設」、旧古ケ崎南小で行っている「ふれあい学級の充実」、午前、午後、夜間の「三部制義務教育学校の研究」を挙げた。

7611 1▲30年間続いている松戸自主夜間中学

 いじめが起きにくい学校構造をつくる試みだという。三部制義務教育学校は不登校対策で成果をあげている松戸南高校を参考に「義務教育にも三部制のような学校があってもいいのではないか」と話した。また、松戸市に公立の夜間中学校(中学校の夜間学級)を設置することを市に要望し、30年間活動してきた「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」(藤田恭平代表)も、三部制義務教育学校の設置は「夜間中学」開設を拡大した措置と考え、大きな期待を寄せている。

 なんらかの理由で学校に行けなくなった児童生徒を対象に、一日でも早く学校に復帰できるよう支援するために平成4年から設置されている「ふれあい学級」。当初は運動公園会議室で行われていたが、平成22年からは廃校になった旧古ケ崎南小で行われている。時間は午前9時15分から午後2時30分まで。自主学習形式で臨時職員が派遣されている。図画工作や音楽、作文を書く時間のほか、レクリエーションや栽培活動、調理実習などを通して「集団」に慣れさせるほか、老人ホームでのボランティアや宿泊体験活動などの学級行事も行われる。

 市教育研究所の大井徹所長によると「三部制義務教育学校」は、この「ふれあい学級」を拡充した延長線上にある、という。自主学習だけでなく、授業を実施できる体制を作り、不登校だった子どもたちが高校進学できる道をつけていきたいという。

 30日以上欠席している不登校の児童生徒は昨年度401人いた。そのうち中学生が316人を占める。「ふれあい学級」に来る子は約40人だった。朝起きられない子、なかなか家の外に出られない子もいる。昼や夜に学校が開かれれば、家の外に出て学校に来るきっかけをつかむ子も増えるかもしれない。一方で、集団生活に慣れるのがやっとという子も多く、授業を行える体制を作っていく道は厳しいようだ。「ふれあい学級では、学校に行けない子の居場所づくりをしてきました。個人差があり、非常にデリケートな問題です。急がず、慎重に研究を進めたい」と大井所長は話していた。

「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」も期待

 市に公立夜間中学校開設の必要性を訴えてきた「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」(以下、「市民の会」)では、この動きに大きな期待を寄せている。

 市民の会では公立夜間中学を必要としている人たちの受け皿として、昭和58年(1983)8月から「松戸自主夜間中学」を開講してきた。毎週火曜日と金曜日の午後6時から9時まで市勤労会館で自主学習と一斉授業が行われている。今年で30年を迎え、来月2日午後2時からはジャーナリストの鎌田慧さんを招いて「開講2500回記念公開授業」が市民会館で行われる(詳細2面)。

 市民の会では自主夜間中学の開講を続ける一方で、公立夜間中学開設を市に働きかけてきた。昨年は小沢暁民議員(松政クラブ)の仲介で公式、非公式に3度、山根教育長との懇談を持った。公立夜間中学の開設について、山根教育長は否定的だったが、大津市のいじめ自殺事件を受けてか、3度目となる8月7日の懇談で「三部制義務教育学校」の構想を明らかにし、「(実現すれば)市民の会が要望していることの大部分に応えることになる」、「(三部制義務教育学校については)市民の会が賛成でも反対でもやるつもりでいる」と話したという。国勢調査では市内に255人の未就学者がおり、その約半数が60歳以上の高齢者だという。市民の会では、こうした未就学者が通える学校として「三部制」に期待を寄せているが、大井所長の話によると、市が対象としているのは学齢期の子どもたちだけのようだった。年齢に関係なく未就学の人が通える学校になるのか、また、教師を派遣する場合、県から予算が出るのかなど課題も多く、今後の動向が注目される。